一日を変え一生を変える小説を!

相対的な時間の中で生きていく

星を継ぐもの 感想(ネタバレなし)

f:id:ranpensou:20210601140930j:plain

星を継ぐもの

 

まえがき

こんにちは、考蛙です。
今更ながらジェームズ・P・ホーガン著の「星を継ぐもの」読みました。
古典的名作と名高い作品ですが、その名に恥じないものほど面白かったです。
色々と語りたいのですが、ネタバレなしの記事の予定なのでうまいことかければいいのですが。
ちなみに、wikiなんかを見ちゃった方は本作が3部作という事をご存知だと思いますが
この一冊だけでほぼすべての謎は完結するので、これだけ読んでも謎が残るということはありません

本文

私は読む本を決める時に、Kindleの試し読みで感触を確かめて、自分に合いそうだと思った本を読むようにしているのですが、この本は出だしからズルくて

 

「月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。」

 

ってあらすじで始まるんですよ!!!この始まりで面白くないわけ無いじゃん!?
とノックアウト。そのまま一気に読んでしまいました。

 

この作品は正統派SFといいますか、昨今のSFにありがちなトンデモ理論を展開する作品とは違って
(当時の)科学的、論理的な視点から書き出されており、本来の意味でのハードSFに近い作品になっています。

また、展開自体は”謎が謎を呼ぶ”系の使い古されたものではありながら、どれもが突拍子もなく始まるということはなく、何らかに関連性があり、とても丁寧に作られているという印象を受けます。そして、何よりも特徴的なのは


「ほぼすべての登場人物が自身の知的好奇心を中心に行動しており、導き出される答えさえも、彼らが追求したことの結果でしかない」

 

と、思える物語の作り方。普通の小説ならば、ヒロインが居たり、恋愛があったり、アドベンチャー的な要素のような、緩急がつくような要素や、幕間のようなものが存在してもいいはずなのに、この物語には一切存在しません。

それなのに、純粋に謎に対するワクワク感のみで楽しませてくれる作品というのは圧巻の一言です。

何が?というとネタバレになってしまいますが、主人公が中盤に自分の将来に関して重要な決定を下すシーンでも、その選択をする理由が自身の知的好奇心のみ。というのは潔く、ある意味狂気といっても過言ではないほど。
SF作品でありながら、次々と謎が積み重なり、解決されていく様子は推理小説のような爽快感もあります。最後に残る謎の解決方法も、非常にSFチックで面白みがあるのも好印象でした。

あとがき

はっきり言ってこれがほぼ半世紀前に書かれたとは到底思えない。という感想しかでてきませんでした。
文体を少し変えれば現代の最新作と謳っても違和感がないくらいには先進的な内容なのに、この本が出版された1977年当時の科学技術といえば
Appleの初代「Apple Ⅰ」や「スター・ウォーズEP4」ゲームでも「スペースインベーダー」といったレベルの技術力しか存在しなかったにも関わらず
ここまで現代でもほとんど(もちろん多少はある)違和感のないような作品を書き上げることができるのは、天才といっても差し支えないのでは…?ってちょっと思っちゃいます。

子供の頃に忘れてしまったような。ワクワクみたいなものや、未知への楽しみなんかが存在が存在していて、昔の子供がスペースシャトルアポロ計画なんかにワクワクしてた理由がほんとわかるような気がする。そんな気分になれる本でした。

では、お読み頂きありがとうございました。