滑らかな世界と、その敵 感想(ネタバレ無し)
今までのSFを全て過去のものにするほどの力をもつSF短編集
こんにちは、考蛙です。
今更ながら、小説「滑らかな世界と、その敵」を読んだので感想を書き綴ります。
長ったらしい事は抜きにして、言いたいことは
全てのSF好きはこの本を読むべきだ!!
これに尽きます。
タイトルでもある「滑らかな世界と、その敵」は誰もが想像していたけれど、誰も作ることが叶わなかった。そんな夢のような短編で
これは比喩的表現ではなく、「うだるような暑さで目を覚まして、窓から雪景色を見た(中略)夏も盛りになってきたけれど、朝起きて真っ先に降り積もる雪を窓から眺めるのがあたしの日課だ。」
なんて破天荒な始まりをして、あんな綺麗な終わり方を見せつけられたら素晴らしいという言葉しか出ません。
初手の作品である「滑らかな世界と、その敵」を読み終えた所で、私が抱いた率直な感想は
この短編と同じ密度の作品が5作“も”この本には入っているという事実に驚愕し、それは同時に読み進める理由には十分すぎるものであり
そして、なぜこのような素晴らしい作品を出版当初に読まなかったのか?という一種の後悔です。
それほどまでに、この1作は私の心を揺るがし、長年忘れていたSFに対する激情を呼び起こすものでした。
正直な所「滑らかな世界と、その敵」という1作品だけで本1冊分の価値があると私は考えます。
それは金銭的な価値でもあり、作品的な価値でもあります。
この短編集に詰め込まれた他の作品たちは、どれもが非常に高い水準で完成されており、短編で終わらせるには惜しいと思えるものばかりで
掘り下れば映画三部作位には易易となるほどの密度を誇り、それを短編という形で書き上げることによって、人によっては過去のsfとは一線を画すものである。という認識を持つレベルに感じました。
長々と書いてしまいましたが、この短編集からお気に入りであるもうひとつの作品「光より速く、ゆるやかに」を紹介したいと思います。
現代を舞台にしたもので「何らかの原因により、限りなく時が進むのが遅くなった電車の中に取り残される学生」と、それをなんとか解決しようという残された学生の家族達が奮闘する…という、ある意味sfらしい作品でもあるのですが、そこで登場するのが皆さんの身近にも存在し、馴染みのあるアレです。
この「アレ」が登場することによって、この作品はSFの枠組みを飛び越えて、別のなにかへと昇華され
それは不気味な、SFのような何かでもあり、「リアル」のような何かでもある。そんな作品になっていて
私達の未来はsfでないと誰が言い切れるのか?と言いたくなるような。素晴らしいです。(最後に語彙力を失いましたごめんなさいw)
総評
「滑らかな世界と、その敵」非常に素晴らしい短篇集です。
本当はこの記事もネタバレ全開で書くつもりでしたが、書いてるうちに、「これほどまでに素晴らしい作品を読む機会を奪うのは人類にとって惜し過ぎる。」という思いが強くなり、ネタバレなしの記事となったくらいです。
SF好きの人は絶対買え!!!!!
それくらい言っても損はないだろう。と思えるような作品です。
では、お読み頂きありがとうございました。