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相対的な時間の中で生きていく

星を継ぐもの 感想(ネタバレなし)

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星を継ぐもの

 

まえがき

こんにちは、考蛙です。
今更ながらジェームズ・P・ホーガン著の「星を継ぐもの」読みました。
古典的名作と名高い作品ですが、その名に恥じないものほど面白かったです。
色々と語りたいのですが、ネタバレなしの記事の予定なのでうまいことかければいいのですが。
ちなみに、wikiなんかを見ちゃった方は本作が3部作という事をご存知だと思いますが
この一冊だけでほぼすべての謎は完結するので、これだけ読んでも謎が残るということはありません

本文

私は読む本を決める時に、Kindleの試し読みで感触を確かめて、自分に合いそうだと思った本を読むようにしているのですが、この本は出だしからズルくて

 

「月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。」

 

ってあらすじで始まるんですよ!!!この始まりで面白くないわけ無いじゃん!?
とノックアウト。そのまま一気に読んでしまいました。

 

この作品は正統派SFといいますか、昨今のSFにありがちなトンデモ理論を展開する作品とは違って
(当時の)科学的、論理的な視点から書き出されており、本来の意味でのハードSFに近い作品になっています。

また、展開自体は”謎が謎を呼ぶ”系の使い古されたものではありながら、どれもが突拍子もなく始まるということはなく、何らかに関連性があり、とても丁寧に作られているという印象を受けます。そして、何よりも特徴的なのは


「ほぼすべての登場人物が自身の知的好奇心を中心に行動しており、導き出される答えさえも、彼らが追求したことの結果でしかない」

 

と、思える物語の作り方。普通の小説ならば、ヒロインが居たり、恋愛があったり、アドベンチャー的な要素のような、緩急がつくような要素や、幕間のようなものが存在してもいいはずなのに、この物語には一切存在しません。

それなのに、純粋に謎に対するワクワク感のみで楽しませてくれる作品というのは圧巻の一言です。

何が?というとネタバレになってしまいますが、主人公が中盤に自分の将来に関して重要な決定を下すシーンでも、その選択をする理由が自身の知的好奇心のみ。というのは潔く、ある意味狂気といっても過言ではないほど。
SF作品でありながら、次々と謎が積み重なり、解決されていく様子は推理小説のような爽快感もあります。最後に残る謎の解決方法も、非常にSFチックで面白みがあるのも好印象でした。

あとがき

はっきり言ってこれがほぼ半世紀前に書かれたとは到底思えない。という感想しかでてきませんでした。
文体を少し変えれば現代の最新作と謳っても違和感がないくらいには先進的な内容なのに、この本が出版された1977年当時の科学技術といえば
Appleの初代「Apple Ⅰ」や「スター・ウォーズEP4」ゲームでも「スペースインベーダー」といったレベルの技術力しか存在しなかったにも関わらず
ここまで現代でもほとんど(もちろん多少はある)違和感のないような作品を書き上げることができるのは、天才といっても差し支えないのでは…?ってちょっと思っちゃいます。

子供の頃に忘れてしまったような。ワクワクみたいなものや、未知への楽しみなんかが存在が存在していて、昔の子供がスペースシャトルアポロ計画なんかにワクワクしてた理由がほんとわかるような気がする。そんな気分になれる本でした。

では、お読み頂きありがとうございました。 

3つの夢と1つの真実の物語  白昼夢の青写真 微ネタバレ感想 (追記あり)

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白昼夢の青写真

まえがき

お久しぶりです。考蛙です。
発売からかなり立っちゃってますが、自分なりに咀嚼し理解する事が出来たので感想文にしました。
予め書きますが、押しブランドであるラプラシアンなので無意識に贔屓目に書いているハズです。
ただし、なるべく中立で書くように心がけているので、そこの所はご了承ください。

随所に書いてる最中のメモ書きが残ってますが、Tips的にあえて残してあります。

 

今作もとにかく音周りがとても良かった。本体より高いサントラを衝動買いしてしまうくらいには良く、曲もシナリオや絵に負けないクオリティで、ないがしろにされていないのはよく
ラプラシアン自体のファンディスク風な作品だけあって(私が勝手に呼んでるだけですが)
曲も過去作からのリアレンジや、リメイクが多く存在していた点、絵も過去作から流用しているのは逆にしっくり来たのでアリですね。
今作はCASEごとにOPEDがあり、フルのボーカル曲が全部で8!(ディザーもいれれば9!)も存在していて、スゲーと思いつつ、これでも結構な数の曲をボツにしているとサントラに書いてあってラプラシアンまじ恐ろしいと感じた所存…。
しかも、どの曲も過去作やってると「は????ええ???マジで???そこでこの曲???!!!」ってなっちゃうのでエモいのも間違いなし。

 

概要

白昼夢の青写真はかなり独特の作り方をしていて、群集劇でもなく、オムニバスでもない。CASE1、2、3と3種類の夢の物語を展開しながら、CASE0という真実でまとめています。
「複数の風呂敷を開いた上でCASE0という結び目で複数の風呂敷を閉じる」という今までにありそうでなかった発想は素晴らしく斬新で、前衛的なものですが、かなりハマっていたような印象を受けます。

あくまで体感ですが、各CASEにモチーフとなる作風が定められているように感じられ、同一作品でありながら、CASE毎に毛色が全く違うと感じたので、それらをまとめあげることができたCASE0の存在が大きいのかもしれません。

蛇足的なものになってしまいますが、CASEのプレイ順序も、特に思い入れが無ければCASE0的にCASE3→CASE2→CASE1か、過去作っぽい雰囲気のCASE2→底抜けにお気楽な話のCASE3でエネルギー補充→貯めたエネルギーで重く苦しいCASE1のどちらかが楽しいように感じます。
もちろん、好きな順序でプレイしても話には全く支障がないので大丈夫です。

以下各ケースの感想

 

CASE1

まるで純文学をエロゲで再現しているかのような、特異なものでした。
難しいかと聞かれればそうでもなく、鬱なのかと言われればそうでもなく
純文学に存在する"美しさを求めるあまり倫理観を無くした物語"みたいな感覚が続きます。
実際、志賀直哉芥川龍之介などの純文学寄りの人たちばかりで、(この雰囲気を)意図的に作ってきているのを感じました。
それに重ねるように、違和感を抱かざるをえないほどのゴリゴリなご都合主義的なストーリー。ライターの実力が試されそうなシーンの連続。(実際このCASEを通して成長したと緒乃ワサビ氏は言っていました。)
伏線回収や、伏線ですらないと思われるものも伏線として回収する様子は、Ever17マヴラブを思い出させました。
総じて重く歪なものでしたが、色々な意味でエロゲでしか出来ない良いエピソードと評価したいです。

 

OPの「クラムボン」もいい曲。歌詞が独自の解釈というか、クラムボンは正体不明の"モノ"を指す言葉ですが、その中でもいくつかある案を統合して、折衷的な歌詞になっているのは印象的で
EDの「ブルカニロ」はキミユメのOPのリアレンジな上にとんでもない歌詞をブチかましてくるので
リアルで「うああああああまじかあああああああああやりやがったな緒乃ワサビ!!!!!!」って叫んじゃう位に過去作プレイ者には刺さります。未プレイでも刺さります。多分。
(なんだよフル版の歌詞ズルすぎだろ、なんでこんなクリティカルな歌詞にしたんだよ許さんぞ。)
"ブルカニロ"について詳しくは語らないのですが名前の由来的に”最終的に消えてしまった存在”と捉える事も……?できるようになっているのはとにかくエモい。


メモ あの頃ペニー・レインと渡辺淳一失楽園

 

CASE2

主人公はシェイクスピアをモデルにしているため、CASE自体が悲劇調に仕上がっており、イギリス過渡期であり抑圧されていた憂鬱な雰囲気が漂う中で、ある種幕間のようにギャグが挿入されることで、全体の雰囲気を和らげています。

まあ、ここは流石のラプラシアン。悲劇を悲劇にするつもりはありません。
なんと、登場人物のキャラが濃いです。むちゃくちゃ濃い。

スペンサーを始めとして、キキ、ウィル父(主人公の父)と今までのラプラシアンワールドのような登場人物がたくさん登場して、キキはどうみてもついてないし、スペンサーはラプラシアン史上最も意味のわからないキャラだし(と思ったけど処女膜教授が居た)


ギャグとシリアスの落差や話の作り方については偶然だと思うのですが
自分たちの生活がゆっくりと終末に向かっていることを実感しながら何も出来ない」みたいなのってちょうど過去作のニュートンと林檎の樹と近いものがあって
後々実は狙ってたのかな?って思ってたりしたんですがどうなんでしょ?


また、何気に(これはCASE3、CASE0とも共通しますが)時代考証がものすごくちゃんとしてるのが印象的で、私がラプラシアンの上手だなと感じる部分に、SF界では有名な”大きな嘘は一つまでにする”って鉄板をきっちり守ってる点なんですよね。
これが曖昧になるとSFとファンタジーの区別がつかなくなって収集がつかなくなるんのですが、ラプラシアンはそこの線引がうまい。

 

色々能書きたれちゃいましたが、正直なところ、得意ジャンルのゴリ押しでここまで素晴らしい話を作れるのならば、言うことなしの大満足。
プレイ後に思い出したのですが、ライターの緒乃ワサビ氏がたまに言っているイメージのある「物事には代償がつきまとい、必ず支払う。ただしハッピーエンドがいいよね」みたいなのを地で行く章だからこそ"ラプラシアンらしさ"が出てたのかなぁ。と思ったりして。
もちろん伏線もバリバリ貼ってあってすごい。人によっては切なすぎて泣いてしまうかもしれない。そんないいお話でした。

メモ
「オルヴィアがスペンサーと劇場でセックスしている現場に遭遇するとウィルの心が壊れてしまうと感じた」からと間接的な描写になったらしい
元々ウィルとスペンサーのホモセがあったらしいんですが、尺の関係で消えたとか

恋は雨上がりにように、失楽園

 

CASE3

名前もぶっ飛んでる桃ノ内すももがもーとにかくかわいい!!!!"もものうちすもも"って"も"多すぎだろwww
って感じのぶっ飛んでるお話です。実際ぶっっっとびすぎていつものラプラシアン!!!!って感じなんですが
登場人物全部コミカルなキャラでノリと勢いに全振りしたかのようなストーリーでそれ自体がもう伏線だったりするのはヤバいッスね。と語彙力を失いますw
こればっかりは体験してもらいたいし、何なら体験版でCASE3だけでもやってほしい。

前作未来ラジオの舞台を使っているので、なんとなく予想はして居たのですが、びっくりなくらい青春してるなぁってストーリーがいいですね。好き。
ただ、若干歯切れの悪いというか、CASE2とCASE1が強烈だった分、休憩というイメージがついてしまって、ケースの順番によっては微妙な印象を与えてしまうかもしれない。それでも、個人的に最も好きなCASEです。
地味にスペンサーが居たりするので、CASE2はプレイしていないとわからないかも?

 

ちなみに、本作発売前からOP曲の「恋するキリギリス」がファンの中でも一番人気が高かったみたいで、歌詞がすごく良いのですが、元々サバサバ女子みたいな歌詞なのを、あえてこういう風に書き換えたみたいで、歌詞の才能もある緒乃ワサビ氏はエグい(流石に褒めすぎ?)

www.youtube.com

メモ
梓姫はVtuberが消えたらどうなるかを想像して作られている。
参考作品は恋に落ちたシェイクスピア

 

CASE0

何を言ってもネタバレになってしまう。怒涛の伏線回収。Ever17とかと並ぶレベル。古今東西の作品でも、ここまで伏線を回収するものは数えられるくらい。
超絶怒涛の展開すぎてぶっ飛びすぎる。出雲かわいい。ちょっとだけ冗長的。削る部分がないって言ったら実際そうなんだけど、ノーランの映画みたいに長いと感じてしまった。
なんて言うんだろうか、あの、綺麗にはまとまっているけど長すぎると感じる感覚。

強いて言えば、CASE1.2.3がテンポよくサラサラ進みすぎたから相対的にそう感じるのかもしれない。
登場人物みんな魅力的で、CVってあるじゃないですか、キャラクターヴォイス
あそこまでそういう事に使う??え??マジで??ヤバすぎない??
って思える使い方するの、これ"ADVでしか作れない"作品に昇華してない?って素直に思って、もう筆舌に尽くしがたい。
公式がビターエンドと称するだけあって、エンドは賛否両論ありそうですが、ED後にラプラシアンおなじみの「つよくてry」も存在しているので安心?


まとめ

ケース1.2.3の終わりからケース0の始まりまでは点数をつけるとしたら150点くらいだったのに、CASE0で80点に落ちました。
ラプラシアンにありがちな「体験版がピークだった」ってのかと思ったけれど、そうでもなさそう。
いやでも……未来ラジオよりも、ニューリンよりも、キミユメよりも格段に進化しているハズなのに
圧倒的に素晴らしいはずなのに。でもなぜか人には進められない。そう感じてしまう。そんな作品。


今作はとにかく衒学的で、消化不良が著しいというか、余韻が残るといえばいいのか、なんとも筆舌に尽くしがたい作品でした。
ライター兼代表の緒乃ワサビ氏が前に進むために必要な作品で、ひいてはラプラシアンが過去と決別するために作ったからこそ、このような形になった。としか考えられないようなもので"今"ラプラシアンが間違いなく全力で作ったからこそ出来た作品です。


誤解をしないで頂きたいのですが、この作品は間違いなく名作です
終わり方は公式の言うようにビターエンドなので賛否はあるかもしれません。
過去の作品をやっていればやっているほどエモいと思える出来なので、ある意味過去3作品のファンディスクと呼んでもいいのかもなんて思ってたり。

 

 

 


(ここからネタバレするので未プレイの方は読まないでください)

 

 

 

 

 

 

 

追記


公式のコラムやci-enの製作日記を読んで重大な勘違いに気づきました。この作品は世凪と海とセカイ系です。
だから別にバッドエンドでもいいんです。
三種類の夢がきれいにハッピーエンドを迎えられたのは、それらが"物語"であったからで、"現実"であるはずのCASE 0救いは存在しない。
それは世凪と海斗の物語であるはずの"現実"が綺麗に終わることはないという遠回しなメッセージでした。
そう考えると、"人間を定義する記憶という"哲学的な内容なのも、緒乃ワサビ氏が"やりたいことをやりきるために書いた"というのも納得できます。

個人的に今作の本質に近い意図は氏が公式のコラムで述べていた

”結局、そのとき自分の中にある主題と向き合って、
こたえ(あるいはこたえらしきもの)に辿り着くまえに物語を閉じてしまうと
書き手としていつまでも同じところをぐるぐると回ることになると。
例えば今から10年後、いいおっさんになったあとも、いつまでも同じ位置で、同じような深度で創作を続けている自分の姿って割と悪夢だったんですよ。”

って言ってるんですよ。これって今作がある意味過去のラプラシアンとの決別を意味してるんじゃないかって。思ってたりします。

 

ちょっとメタい考察になってしまうのですが、緒乃ワサビ氏の過去のツイートだったり、今作製作中のクラウド監視を見ていて感じるのは、多分氏は自分の、自分たちのアイデンティティを確立、もしくは"ラプラシアン"を確立するために通るための道だった。こそ作られた作品です。やっぱファンディスクじゃん?

 

メモ
(ラプラシアンの由来はラプラシアンのという数学用語で、それに対して誰もが共通認識を持っているが、それを説明できる人間は少ない。という共通認識になりたいという思いからつけたらしい。)

 

未来ラジオと人口鳩感想(微ネタバレあり)

まえがき

今更ながら途中で投げてしまっていた「未来ラジオと人口鳩」をクリアしました。

投げる前は椿姫枝が終わり、かなり終盤まで行っていたと思うのですが、全クリアする前に別の事に興味が向いてしまいそのまま……という感じだったので、1からプレイしなおして書いてます。このタイミングでプレイしたのには理由があって

ラプラシアンの新作「白昼夢の青写真」のマスターアップが2020年9月10日に完了し、(2回の延期を経て)無事新作が出ることが確定したということ。
また、「白昼夢の青写真」の体験版をプレイさせて頂いた所、過去作をちゃんと知っている方が都合が良さそうだと思ったことです。

私自身がラプラシアンの信者ということもあり、若干贔屓目にレビューしてしまっている気もしますが、そこの所はお許しください……。

 

作品基本情報

  1. 発売年 2018年
  2. ブランド Laplacian 
  3. シナリオライター 緒乃ワサビ
  4. 原画 霜降り ペレット

ラプラシアンというブランドを知らない方に向けて説明すると、一言で言えばエロとギャグの黄金率を駆使してギャグで殴りに行くメーカーです。

この「未来ラジオと人工鳩」は3作品目ですが、処女作である「キミトユメミシ」では衝撃のデビューを飾り?2作目「ニュートンと林檎の樹」でエロとギャグの絶妙なバランス。という謎の才能を開花させ、未来ラジオでいい感じに進化した・・といえるかもしれません??

ぶっちゃけエロゲなのにシナリオの出来の良さはもちろんの事、それに劣らないくらい笑いのセンスも高いのどういう事なんですか??意味わからん??って感じなんですが、私にも意味がわからないです。

(ちなみにキミトユメミシはフル版が無料配布されてたりします。)

 

あらすじは……書くの大変なので公式サイトの世界観のページを見てください。(丸投げ)

laplacian.jp

ちゃんと全部見ていただけた方ならば、ラプラシアンがどういうブランドか理解していただけたと思います。理解できない?それが正常なので大丈夫

 

ちょっと本文に行くまでが長くなりすぎたので本文行きます。

 

水雪√

良くも悪くもいい感じに着地して無難に終わりました。
義妹である事をフル活用した一般的なシナリオ・・・と言いたい所なんですが全くそんな事ないです。

なんで緒乃ワサビ先生はいつもギャグを主体でストーリーを作ろうとするんですか??女の子の腰にちんちんのストラップつけとけば面白いとでも思ってるんですか???めちゃくちゃ面白かったです。

とかいう意味のわからない感想しか出てこない。めちゃくちゃ面白い枝でした。この"面白い"は"良く出来てる"とか"感動的なシーンがあった"みたいな比喩的なものではなくて、本当に笑いしか出てこない面白いなのでどうかしてる(褒め言葉)

 

秋奈√

なんとも形容しがたく、良くも悪くも純愛で、途中下車式のデメリットが出てしまったようも感じます。
それでも、話的に単調と言うわけではなく、ちゃんとその後に続く謎は残しつつ、謎は深める模範的な枝だったのかもしれません。
ちょっと余談ですが、枝クリア後に感じた率直な感想は「Ever17のプレイ途中」みたいな感じみたいな不完全燃焼感です。

 

椿姫√ 

個人的に最も好きな枝で、キャラが好きというのもあるのですが、不器用で素直になれなくて、でもちょっとだけ勇気を出す。という主人公とは対極にあるような人物なのがたまらなく可愛いです。
文句なしのハッピーエンドかつフラグも回収するスッキリ感はある意味ラプラシアンらしくない。ニューリン(ニュートンと林檎の樹)から確かな進化を感じれます。

 

かぐや√

色々と衝撃がすごい。ネタバレになっちゃうので言いにくいのですが、緒乃ワサビさんが書く上で大切にしていると言っていた「物事には代償がつきまとう」って概念がとても良くわかる。これぞラプラシアンの真骨頂って感じ。正直ちょっと泣きそうになりました。水雪シナリオとのすごい差である

 

強くてコンティニュー√

「強くてコンティニューって何www」ってお思いの皆さん……ラプラシアンにはあるんですよ……意味のわからないモードが……。

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しかも自分で自分たちの延期した件イジってるんですよ……ホント意味わからない(褒め言葉)

話が脱線したので戻します。強くてコンティニューとはラプラシアン名物いつものアレです!多くは語らないのでぜひプレイして確認してみてください!暇つぶしのセックス最高!!!

 

総評

 

シナリオが途中下車式なのを上手いこと使用したのは素直にアッパレって感じがしますが、結局かぐやTureありきな結論に感じてしまったのは、少し残念だったかもしれません。

ただし誤解がないように言うと、ラプラシアンが元々そういう作品を作っているので、単純に私に合わなかったというだけで、作品自体が悪いという事では無いのは名言します。

また、前作ニューリンと比較して整合性、ボリューム、ストーリー展開……etc と全てにおいてリファインされているな……と実感できるような作品です。(流石にキミユメと比べるのは無粋な気がしますが)

正直思ったのは、これだけの作品を作れるラプラシアンが集大成と言っていた(気がする)「白昼夢の青写真」はそれこそ大ヒットしてもおかしくない気がして、ワクワクで夜しか寝れそうにないです。

みなさん2020年9月25日は白昼夢の青写真の発売日なので体験版やって備えてください!!(ダイマ

滑らかな世界と、その敵 感想(ネタバレ無し)

今までのSFを全て過去のものにするほどの力をもつSF短編集

 

こんにちは、考蛙です。

今更ながら、小説「滑らかな世界と、その敵」を読んだので感想を書き綴ります。

 

長ったらしい事は抜きにして、言いたいことは

 

全てのSF好きはこの本を読むべきだ!!

 

これに尽きます。

タイトルでもある「滑らかな世界と、その敵」は誰もが想像していたけれど、誰も作ることが叶わなかった。そんな夢のような短編で

これは比喩的表現ではなく、「うだるような暑さで目を覚まして、窓から雪景色を見た(中略)夏も盛りになってきたけれど、朝起きて真っ先に降り積もる雪を窓から眺めるのがあたしの日課だ。」

なんて破天荒な始まりをして、あんな綺麗な終わり方を見せつけられたら素晴らしいという言葉しか出ません。

 

初手の作品である「滑らかな世界と、その敵」を読み終えた所で、私が抱いた率直な感想は

この短編と同じ密度の作品が5作“も”この本には入っているという事実に驚愕し、それは同時に読み進める理由には十分すぎるものであり

そして、なぜこのような素晴らしい作品を出版当初に読まなかったのか?という一種の後悔です。

それほどまでに、この1作は私の心を揺るがし、長年忘れていたSFに対する激情を呼び起こすものでした。

 

正直な所「滑らかな世界と、その敵」という1作品だけで本1冊分の価値があると私は考えます。

それは金銭的な価値でもあり、作品的な価値でもあります。

この短編集に詰め込まれた他の作品たちは、どれもが非常に高い水準で完成されており、短編で終わらせるには惜しいと思えるものばかりで

掘り下れば映画三部作位には易易となるほどの密度を誇り、それを短編という形で書き上げることによって、人によっては過去のsfとは一線を画すものである。という認識を持つレベルに感じました。

 

 

長々と書いてしまいましたが、この短編集からお気に入りであるもうひとつの作品「光より速く、ゆるやかに」を紹介したいと思います。

現代を舞台にしたもので「何らかの原因により、限りなく時が進むのが遅くなった電車の中に取り残される学生」と、それをなんとか解決しようという残された学生の家族達が奮闘する…という、ある意味sfらしい作品でもあるのですが、そこで登場するのが皆さんの身近にも存在し、馴染みのあるアレです。

この「アレ」が登場することによって、この作品はSFの枠組みを飛び越えて、別のなにかへと昇華され

それは不気味な、SFのような何かでもあり、「リアル」のような何かでもある。そんな作品になっていて

私達の未来はsfでないと誰が言い切れるのか?と言いたくなるような。素晴らしいです。(最後に語彙力を失いましたごめんなさいw)

 

総評

「滑らかな世界と、その敵」非常に素晴らしい短篇集です。

本当はこの記事もネタバレ全開で書くつもりでしたが、書いてるうちに、「これほどまでに素晴らしい作品を読む機会を奪うのは人類にとって惜し過ぎる。」という思いが強くなり、ネタバレなしの記事となったくらいです。

SF好きの人は絶対買え!!!!!

それくらい言っても損はないだろう。と思えるような作品です。

では、お読み頂きありがとうございました。

 

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

  • 作者:伴名 練
  • 発売日: 2019/08/20
  • メディア: 単行本
 

 

ブログの執筆方針について

はじめまして、執筆者の「考蛙」と申します。

この度はブログの記事に興味、関心を持っていただき嬉しく思います。

当ブログでは、記事にした作品に最大級の敬意を払うと共に

ネタバレ有り、無しを問わずに「作品が最も引き立つように紹介をする」をモットーに執筆しており

端的に言ってしまえば「この作品をプレイor読みたい」と思わせることができるような記事を書くことを目標としています。

必要があればネタバレをする事もありますが、制作側からすれば好ましい行為ではない事は重々承知なので、必要な場合にはタイトルに「ネタバレあり」と表記します。

また、ADVゲームのレビューの場合は、√という単語を意図的に"枝"と置換して書いていますが、これは√という表現だとTure以外は全て蛇足。という文字的なニュアンスを嫌っての事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

グノーシア 感想 (ネタバレあり)

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困難を乗り越えて 星の世界へ



発売当初から一部界隈でとても話題になっていたグノーシア
IGN JAPANがインディーズゲームながら10/10点をつけていたり
プレイした人の感想で
"このゲーム唯一の欠点はPS vitaで発売されたこと"というレビューがあったり

名作という期待はあったのですが、当初Vitaしか発売されておらず、先日Switchに移植されたのでプレイしてみました。


先に書いてしまいますが、ループものか人狼が好きな方には間違いなくぶっ刺さります。

 


当ブログでは前置きで作品のプロフィールを書くので興味のない方は飛ばしちゃってください。

 

作品のプロフィール

 

グノーシアは2019年PS vitaで発売され、2020年にSwitchに移植されたゲームで、今回プレイしたのはSwitch版です。

発売元は「プチデポット」というインディーズですが、過去に「メゾン・ド・魔王」という作品でヒットを飛ばしているのでご存知の方も居るかもしれません。

ちなみにこのプチデポットは、リーダー「めづかれ」氏 開発、シナリオ担当「しごと」氏  音楽担当「Q flavor」氏 画像担当「ことり」氏の4名からなる小規模系インディーズですが、小規模だからこそ作れる作品である…という印象を強く受けました。

ジャンルとしては"一人用人狼"という特殊ジャンルで、数十回~数百回のループを繰り返す事で登場人物の特徴を知り、全ての情報を入手する事でエンディングを迎えます。


特殊系ADVなだけあって体感で、人狼 部分9割:ストーリー部分1割位の極端な振り方になっていますが

これこそがグノーシア最大の特徴で

あえてストーリーの比率を低くし、ゲーム中の絶妙なタイミングでイベントを挿入することによって、人狼部分を引き立てることに成功しています。(これは意図されたバランスだそうです。)

 

 

前置きが長くなりそうなのでここらへんで本文に行きます。

 

 

数百回のリプレイにも耐えうるゲームシステム性


グノーシアは元々”一人で遊べる人狼ゲームを作ろう”というコンセプトから開発が始まっているので、普通のADV作品と違い"人狼を主軸"としてゲームを設計しており、”人狼を補間するようにストーリーを組み込む”という手法を取り入れる事でADVと人狼の見事な調和を果たしています。

その為か、はっきり言って異常(褒め言葉)としか思えないレベルのバランス調整が施されていて、普段から人狼をプレイしている私から見てもクオリティは非常に高いです

 

 

キャラクターと人狼の華麗な融合

前述の通り、”ループを繰り返し他のキャラクターのバックストーリーを知ることでメインストーリーが進行する" というシステムは、徐々に情報が開示されることでキャラクターを身近に感じる事が出来て"グノーシアは究極のキャラゲー"と称しても差し支えない域まで昇華させている。と感じるのは、素直に素晴らしいの一言です。


また、人狼自体のローカライズにも特徴があり、1ゲームが最大15分程度と短く
人狼がグノーシア」「占い師がエンジニア」「冷媒師がドクター」「処刑がコールドスリープ」 「人狼の殺害が消失」と名称を変更する事によって、重い印象がある人狼を軽くする様々な工夫がなされています。

 

 

まとめ

グノーシア出来が良すぎていくらでも語れるのですが、極力ネタバレを避けたいので、別の記事を書くかもしれないです。

 

また、これは個人的に好印象な部分なのですが、"キャラの設定や情報に関して必要以上に多く語らずプレイヤー自身に補完してもらう"という、いい意味で昔ながらの仕組みを採用しているのは非常に刺さりますし、ステ振りという概念が有ることで、自分だけのキャラを作れるのは非常に嬉しい。(しかもステの振りなおし可能)なと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

オルタード・カーボン リスリブート 感想(ネタバレあり)

普段このブログは自分のプレイしたゲームと小説のメモを目的としているブログなので、アニメの感想を書くつもりは無かったのですが、個人的に刺さるような作品だったので、布教ついでに感想を書きたいと思います。


まえがきついでに解説を書くと
「オルタード・カーボン リスリブート」2020年公開のネットフリックスオリジナルアニメでタケシ・コヴァッチという人物が主人公の「オルタード・カーボン」「ブロークン・エンジェル」「ウォークン・フュアリーズ」からなるタケシ・コヴァッチ三部作の約250年前を描く外伝的作品です。
なお、オルタード・カーボンとブロークン・エンジェルはネットフリックスでドラマ化されているので、リスリブートを見る前に視聴することを強くオススメしたいと思います。タケシ・コヴァッチシリーズは固有名詞が多く、その中でもリスリブートは世界観を知っていることを前提として作られている印象を受けました。

ストーリー(ネタバレなので反転)

 

 物語は、ヤクザの構成員に追われた少女が忍者スリーブに殺されそうになる所を、タケシコヴァッチが助けるところから始まります。

コヴァッチは今回の依頼主である「タナセダ・ヒデキ」から、RDしたタナセダの弟は水元組の2代目組長で、組織交代の儀式と例の少女入れ墨彫り師のホリーが弟の死の謎のカギを握っていると言われます。
水元組の元に向かう最中にCTACと忍者スリーブに襲われ、CTACの「ジーナ」と一時的に手を組むコヴァッチ。無事水元組の拠点である「ワイルドギース」にたどり着く一行
そこで、時期組長の「シンジ」が今回の忍者スリーブを操っており、クーデターを企んでいるらしい事が発覚します。

場面が変わり、ジーナが入れ墨を彫る場面で組長のケンゾウが言うには、ラティマーで水元組が最大のヤクザになれたのは、先代が仁義を守り、RDすることで自浄作用を作り出しているからだそう。
ケンゾウに呼び出されケンゾウの元に向かうコヴァッチ。またまた現れたサイボーグ忍者に大量の構成員を殺され、苦しくもサイボーグ忍者を撃退するが、ジーナが負傷してしまう。

治療とタナセダへの報告もかねて部屋に戻るコヴァッチ達、VRでタナセダにケンゾウは鶏の首を〆たような笑い方をする。と他愛も無い話をすると、何かを察して激昂するタナセダ。コヴァッチに追加の調査を依頼する。

儀式当日、鴎外に呼ばれてフロントに行くと、突如建物が揺れて停電し、急に消えるジーナ。どうやらケンゾウとホリーはグルで、シンジを眠らせてシンジのスタックの中身を消去し、ケンゾウのスタックをシンジの生体スリーブに移し就任式を強行する。

タナセダのホロが現れて、代替わりしているのではなくスリーブを乗っ取っているだけという事実を暴露する。そしてケンゾウは強化外骨格を使用し、コヴァッチやり合うが、なすすべも無く負けてしまう。
そこに現れる生身のタナセダ。ちょっとしたトリックにより鴎外を仲間につけてケンゾウを圧倒する。倒したと思われたが死にきらずにコヴァッチと殴り合い勝利するコヴァッチ。そしてコヴァッチは次の任務に向かうのだった。

            ストーリーここまで

 

 

感想

 

この作品にはオルタード・カーボンの世界観およびサイバーパンクへの深い愛が感じられる分が多数あったので、いくつか書きたいと思います。


まず初めに世界観です。タケシコヴァッチシリーズは世界観がいくつかあって、その中でもあえてサイバーパンクの世界観をチョイスしたのは、個人的にとてもシビレました。
しかもそのサイバーパンクな世界観はきちんとオルタード・カーボンを世界観のツボを抑えており、オルタード・カーボンがそうであったように、ブレードランナーにインスパイアされている、きらびやかなネオン街なのがとても良かったです。

 

音楽面では開始早々で少女がヤクザの構成に追われる部分で流れる音楽。分かる人には分かると思いますが、これは1995年に制作された押井守監督版のGhost In The Sell/攻殻機動隊で使用された謡を彷彿とさせます。

ヤクザを出すから形だけ日本ぽくネオンの漢字看板でも出しときゃいいよ!的なノリかと思えば

攻殻機動隊までもリスペクトする精神に驚きました。CTAC兵であるジーナの髪の毛の色が紫なのももしかしたら・・?

 

登場人物の面で見ても、ブロークン・エンジェルで登場するタナセダが出てきて、何故ブロークン・エンジェルの時点でコヴァッチに貸しがあったのか、その説明的役割を果たしていたり、ジーナの本当の名前はレイリーン・カワハラ(コヴァッチの妹)でCTAC時の活躍を拝めたり、余計な人物を出さずに最低限の登場人物で世界をキレイに回していた感じがした点もかなり高評価だと思います。

 

作品中のストーリー上のネタについても、コヴァッチのスリーブは最上級の物でニコチン中毒だったり、原作でのポーのように重要ポジションにAIを置く、AIホテルの管理人が敵対勢力に対して銃を乱射する。旅館の管理AIが鴎外という名前だからか、案内された部屋の名前が「ヰタ・セクスアリス」であるなどなど…。抑えるツボは抑えたと感じられる素晴らしい出来に思えました。

 

総評

中編ストーリーということもあり、駆け足感は否めない(これは尺の問題なので作品のせいでは無いけれど)のと、未来版龍が如くと揶揄される位のヤクザものなので若干好みは分かれそうですが

タケシ・コヴァッチシリーズが好きな方には絶対に見て頂きたいと思える作品で、なんだったらサイバーパンク好きの方は、この作品を見てから、オルタード・カーボン。ブロークン・エンジェルと見進めて頂いてから、もう一度リスリブートを見ると違った視点からこの作品を見れるので2度オイシイかもしれません。

短いですが以上です。お読み頂きあがとうございました。